黒バイク



Cotswoldsの田舎道は どういうわけかバイクが多かった サラブレッドの騎手のように前のめりで乗るタイプではなく 後ろにそっくりかえるタイプ 男も女もみな黒いレザーのスーツで 五台、十台と群れをなしている 草っ原の真ん中にガソリンスタンドがあった 下山君は イギリスでは自分で入れるんだよ と言って車を下りた 走っているときには気付かなかったが 蜂が何匹もぶんぶんと飛んでいた 大丈夫かな、悪いなと思いつつ 蜂が恐くて車を下りられない 下山君は蜂など目に入らないような顔で ガスタンクのキャップを外している しばらくすると バイクの一団がやってきた 日本で言う暴走族のようではないが 蜂の親玉のようにぶるんぶるんとうるさい 汗とほこりでどろどろの革のスーツが ぷんと臭ってきそうである ますます悪いなと思いつつ ますます下りる気をなくす 下山君は相変わらず涼しい顔をして ガソリンを入れている バイクの一団が爆音を残して去ったあと 下山君の給油も終わってガソリンスタンドを後にした 次に入った街のレストランには バイクお断りと書いてあった バイクの客は嫌われているのだろうか? あの蜂をwaspと呼ぶらしいことは あとで知った


(C) Copyright, 1996 NAGAO, Takahiro
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