旅立つ友に



きみももう二五歳なんだってね。 だとすると、 きみが生まれたとき、 ぼくは今のきみと同い年だった ってことだな。 もうちょっとすると、 自分と同い年だったときの親の姿を、 記憶の中から引っ張り出してきて、 自分の姿と比べちゃったり、 するんだろうなあ。 五〇歳くらいになると、 自分と同い年だったときの親が、 あとどれくらいで死を迎えたかまで、 はっきり見えちゃうんだよね。 点がつながって線になっちゃうのさ。 だから、生きていた思い出に、 何か一つ後に残せるものを作っておきたい、 などと思ったりするんだ。 たぶん作れないけどね。 でも、 きみがそんなことを思うまでは、 まだたっぷり時間があるはずだから、 今言ったことは、 軽く聞き流して、 元気にいってらっしゃい。 悔いを残すなよ。


(C) Copyright, 2012 NAGAO, Takahiro
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