悪いやつ



まず大切なのは、 悪いやつを見つけることだ。 悪いやつは悪いんだから お前は悪いといって非難できる。 いつもは意見の一致しない連中が、 共通に非難するからには、 相当に悪いわけで、 そういうことなら、 誰でも安心して非難できる。 どうせなら、 明らかに悪いやつがよい。 誰もが非難しないわけにはいかないようなやつ。 でも、 本当に悪いかどうかわからなくても、 悪く見えるやつならまあよい。 そういうやつは、 そんなつもりはなくても、 自分で自分を悪く見せてしまうものだ。 それが流れというもので、 たたかれている本人が気付いた頃には、 もう止められなくなっている。 あなたはすごく悪いやつだ。 しかし、非難できるというだけでは、 すっきりしない。 やはり悪は滅びなければ。 そのためには悪いやつを牢屋に叩き込むか、 処刑台送りにしなければならないが、 そうすると悪いやつが一人減るわけで、 新しい悪いやつを見つけて、 補充しなければならない。 でも、 悪いやつなんて、 掃いて捨てるほどいるから、 替えはすぐに見つかる。 心配するまでもない。 だから、 悪いやつを次々に作って、 そいつと戦うと勇ましく宣言すれば、 指導者として生き延びられるわけ。 簡単だろう?


(C) Copyright, 2005 NAGAO, Takahiro
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