秋という季節に



ここ数年、 私にとって秋は物狂いの季節であって、 今日も、 エルネスト・ショーソンのポエム=詩曲などを聞きながら、 たわいのないことを書いているのだ。 四十過ぎて、 妻子抱えて、 失業寸前だというのに、 詩なんか書いて、 馬鹿もいいところだよ。 実際、感じるのだ、 最近、馬鹿に磨きがかかってきたのを。 気がつくと、 何の取り得もなくて、 だから失業しそうだというのに、 自分の馬鹿さ加減ににやけていて、 こんなことでよいのだろうか、 かわいそうな我が妻子よ。 (よくないよな) しかし許せ。 にやけていられるのは今のうちだけだ。 冬になれば、 ただ何の取り得もないだけだということに気付いて、 何も書けなくなるはずだ。




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朝、 誰もいないオフィスに出勤し、 カーテンを開け、 パソコンとエアコンとCDプレイヤーの電源を入れ、 手前のキッチンに戻って冷蔵庫のドアを開き、 コーヒーを取り出してドアを閉める。 あれ、 こんな曲かけたっけかなと不審に思い、 隣室のCDプレイヤーに目をやると、 確かに電源は入っていたが、 曲はかかっていなかった。 なんだ、 そんな曲がかかっているはずはないじゃないか、 聞いたことのない曲だったんだから。




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天空高く、 羽音を立てて、 蚊が飛んでゆく。 血は吸わないが、 糞を落っことすという種類。 もっとも、 ここで飛んでいる蚊は、 糞を落とさない決まりに、 なっているのだそうな。 蚊でも決まりを守るとは、 世の中えらく進んだもので、 あいつらが蚊だということさえ、 思わず忘れそうになるが、 世の中決まり通りに運ぶことなんか、 本当にあっただろうか? 突然糞を落としてきたりして。 実は血も吸うんだったりして。 かと言って、 ぱちんと潰そうとしても、 ちょっと手が届かないのだよ、 そこのぶんぶん唸っている、 蚊。




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業界裏話



真実について語れ、 とのご注文ですが、 わたしどもの業界では、 (わたしどもってわたしと誰だっけ?) そんなものはない、 というのが常識でございます。 仕事柄、確かに、 これこれはこうだからこうなるだろう、 という類の、 ほんとうらしく聞こえる話をすることはございますし、 誰もがというわけではないものの、 信じて下さる方々もいらっしゃって、 何よりも私自身、 ほんとうにそうなるはずだ間違いない、 と思うことさえございますが、 当たったことはありません。 だからといって、 当たったら大変なので、 じゃましているやつがいるんじゃないか、 などということは、 仕事柄、口が裂けても言えません。 ところで、 間違えてわたしにご注文されたのは、 どなたですか? 間違ってますよ。




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裂け目



両方の親指を突っ込んで、 がっと引き裂いたら、 桃太郎は出てこなくて、 かぐや姫はなおさらいなくて、 ただ水が深々と溜まっていたんだ。 うわっまずいな、 と思ったけど、 開けてしまったものは、 もう戻れない。 だから、 次に開ける人が出てくるのを 待つことにしたんだよ。




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右向け右



西の国の隊長が、 兵隊たちに命令しました。 右向け右! 東の国の隊長が、 兵隊たちに命令しました。 右向け右! 二人の隊長が同時に命令しました。 撃て! 弾が当たった人は死に、 当たらなかった人は生き残りました。 どちらの国にも 左向け左! という命令はなかったので、 兵隊の並べ方を間違えると、 弾は変な方に飛んでいきました。 それでも、 弾が当たった人は死に、 当たらなかった人は生き残りました。 当たり前ですね。




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見えない思い



仮に、 霊というものがあるとして、 身体の方は、 火葬場で焼いて、 燃え残りの骨だけになっているのだから、 生きていたときと、 同じ形をしているとは思われない。 やはり、 形のない、 見えない思いとして、 生きている人間の、 たとえば肩のあたりに、 しがみついているのではないか。 その場合、 しがみついているのが 首 ではないことに、 感謝すべきではないのか。




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可能性



生きている、 ということは、 殺される可能性がある、 ということでもある。 殺されるとしたら、 どのように殺されるかは、 少々気にかかるところである。 標本調査としては甚だ不完全ながら、 飲み屋で三人に具体的なイメージを尋ねたところ、 一人は首を絞められると答え、 他の二人は刀で切り殺されると答えた。 首を絞められるという場合、 絞めている相手のイメージも、 具体的に浮かんでいるのではないだろうか。 それに対し、 刀で切りつけてくる相手は不特定であり、 政治的な背景かなんかを持っていそうである。 この三人の場合、 首絞めをイメージしたのが著名な詩人であり、 切りつけをイメージしたのが無名な一般人である、 というところに若干問題があるように思われる。 逆になるのが本当ではないだろうか。 もっとも、いずれにしても、 自分が自分であるから殺される、 というイメージであることに変わりはない。 不特定多数として、 誰という個性のないものとして、 物を壊すように殺される、 というイメージにはならなかったのだろうか。 可能性としては、 その方が高いかもしれないのに。




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卒業



あるひにょうぼがこういった。 もうおとこはそつぎょうしました。 おんなもそつぎょうしました。 これからはすきにさせてもらいます。 いままでだって、 すきにしてきたはずだけど、 とはおもったものの、 いきおいにおされて、 はい、そうですか、 といってしまったが、 そつぎょうしたひとは、 おもいのほかつよいのだった。 おれもはやくそつぎょうしなきゃ。




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小学三年算数国語社会理科



(1) 先生が子どものころは (おじさんになってもしばらくの間は) 消ひぜいはありませんでした。 みなさんがそのころの子どもだったとして、 百円玉を一こ持っていたとします。 この百円で十円のあめは何こ買えるでしょう? (2) みなさんは消ひぜいのない時代を知りません。 百円玉は今もありますが、 十円のあめはあまりありません。 でも運よく十円のあめを見つけたとして、 この百円で十円のあめは何こ買えるでしょう? ただし、子どもでも消ひぜいははらわなければなりません。 三年生にはちょっとむずかしいと思いますが、 消ひぜいでねだんが五パーセント高くなることを 計算に入れて答えてください。 (3) 二時間目は国語です。 ここまでの問題は、 実は自由詩として書かれていました。 (だって行がぶつぶつ切れているでしょう?) それでは、この詩の作者は、 本当は何が言いたかったのでしょうか。 消ひぜいのことにはふれないようにして (ふれると教育上まずいのです) 答えてください。 (4) さて、このような先生は 学校の先生としてどうだと思いますか? じゅくの先生ならどうですか? 意見を原こう用紙一まいにまとめて てい出してください。 ただし、先生に言ってもいい意見と、 言ってはいけない意見の二しゅるいを書き、 言ってはいけない方をてい出すること。 これは国語のじゅ業ではなくて、 社会のじゅ業です。わかったかな? (5) 先生は、理科はわかりません。 ご父兄の皆様への注 これは、二〇〇三年の小学三年生を対象とする実力テストの例です。




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悪いやつ



まず大切なのは、 悪いやつを見つけることだ。 悪いやつは悪いんだから お前は悪いといって非難できる。 いつもは意見の一致しない連中が、 共通に非難するからには、 相当に悪いわけで、 そういうことなら、 誰でも安心して非難できる。 どうせなら、 明らかに悪いやつがよい。 誰もが非難しないわけにはいかないようなやつ。 でも、 本当に悪いかどうかわからなくても、 悪く見えるやつならまあよい。 そういうやつは、 そんなつもりはなくても、 自分で自分を悪く見せてしまうものだ。 それが流れというもので、 たたかれている本人が気付いた頃には、 もう止められなくなっている。 あなたはすごく悪いやつだ。 しかし、非難できるというだけでは、 すっきりしない。 やはり悪は滅びなければ。 そのためには悪いやつを牢屋に叩き込むか、 処刑台送りにしなければならないが、 そうすると悪いやつが一人減るわけで、 新しい悪いやつを見つけて、 補充しなければならない。 でも、 悪いやつなんて、 掃いて捨てるほどいるから、 替えはすぐに見つかる。 心配するまでもない。 だから、 悪いやつを次々に作って、 そいつと戦うと勇ましく宣言すれば、 指導者として生き延びられるわけ。 簡単だろう?




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夜更かし



昼間はいつも眠たくて、 昨日も夜更かししたことを心底後悔し、 今日こそは早く寝ることを誓いながら、 昼間のうちに終わらせておかなければならないことを、 終わらせるためには眠気は敵なので、 やむを得ず数分の、 あるいは十数分の、 あるいは数十分の昼寝を取り、 結局終わらせておかなければならないこと、 なるものは暗くなっても終わらず、 暗くなってからだいぶたっても終わらず、 あまっさえ、 その日のうちに終わらせておかなければならない、 別の何やらまで見つけてしまって、 気が付くと昨日寝た時刻よりもさらに遅くなっていて、 ああ今日もやってしまったかと後悔しても、 その後悔は先に立たずそのような時に限って、 眼はかっと冴えてとても眠れないので、 眠くなる薬をのんでそれでもまだぐずぐずしているうちに、 起きなければならない時間がやってきて、 後ろ髪引かれる思いで起き出してもやはり眠たくて、 昨日も夜更かししたことを心底後悔し、 今日こそは早く寝ることを誓いながら、 その誓いが守られることはないことはわかっている、 そんなあなたでも、 いつかはずっと寝ていられるようになるのです。




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こんにちは



間違えて下りた駅。 初めての街でも、 たくさんの人が歩いていて、 明るい笑顔で、 こんにちは、 と声をかけてくる。 向こうから、 私にそっくりな男がやってきて、 怪訝そうな顔で、 すれ違っていった。




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わからない



おさないころに、 人のあたたかみを知らずに育つと、 おとなになってからもずっと、 人のあたたかみがわからないんだってさ。 不公平なことだね。 わからないことをわかろうとして、 おさないころを取り戻そうとして、 やっぱりわからないものはわからなくて、 人のあたたかみを知る人に、 わからないんだねえと、 ため息まじりにいわれて、 わかるわけがないよなあ、 わからないんだもの。




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白鳥譚



羽衣をぬいで休んでいる白鳥は、 どこに行っても美しいおんなで、 どこにでもいるおとこは、 判で押したように羽衣を奪い、 美しいおんなにこどもを生ませる。 しかしおんなはかならず羽衣を奪い返し、 白鳥になって戻っていってしまう。 死ななければ行けない国へ。 残されたこどもはどうするかというと、 しばらくするうちに母が恋しくなってしまうようで、 一人残らずいなくなってしまった。




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小骨君



喉に引っかかった小骨、 のような存在であり続けること。 小さいながら、 常に存在感を誇示し、 消し去りたいという、 喉の持ち主の望みを、 微塵に打ち砕き続けること。 いくら頑張っても、 最後に手を離してしまったら、 喉の持ち主に、 過大な歓びを与えてしまうこと、 頑張れば頑張るほど、 余計に大きな歓びを与えてしまうことを、 深く自覚し、 何があっても決して手を離さないこと。 最終的な解決などというものは、 決してあり得ないということを、 喉の持ち主に教育し続け、 教育したことを、 決して忘れさせないこと。 だからと言って、 間違っても、 教育してくれてありがとう、 などと喉の持ち主に感謝されるような、 どじを踏まないこと。 そのようなことを心がけながら、 その人は一生を送ったのです。 まだ生きてるけど。




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怪しげな封筒




総選挙が過ぎて一週間もたった頃、郵便受けに差出人も宛名も書いていない封筒が入っていた。普通なら開けずに捨ててしまうところだが、その日はどうしたものか、中身を読んでしまった。下らないものだが、笑い話のたねに書き写してみよう。

  反抒情詩宣言

 マニフェストですよ、今流行りの。
 もう抒情詩とは関わりません。
 三年以内に抒情詩は撲滅します。
 撲滅できなければ、政治家はやめます。
 なーんちゃってうっそぴょーん。
 うちらは政治家なんかじゃないもんね。
 だから、撲滅はしないけど、
 私たちは抒情詩には首を突っ込みません。
 勘違いしないで欲しいんですけどね、
 私たちにも思いがないわけではないんです。
 当たり前でしょ?
 思いのない人間なんていませんよ。
 ただ、
 思いを語る人と
 語らない人がいるだけなんです。
 思いを語る人は、
 語らない人よりも思いが優れているので、
 思いを語れるようになったのでしょう。
 あるいは、語ろうとしているのでしょう。
 (まだ聞いてもらえていない人も混ざっているからね)
 でも、優れている思いを語ろうとする限り、
 自分よりも思いが優れていない人がいることを、
 前提としなければなりません。
 そういうのすごーくやなんだよねえ。
 ですから、私たちは抒情詩とは関わらないことを、
 ここに宣言いたします。
 抒情詩をやっている人たちは、
 勝手にやっていてください。

 こんなものを書くやつは、抒情詩なるものを書いたことがあるに違いない。ひょっとすると、認めてもらいたかったけれども認めてもらえなかったのでひがんでいるのかも。しかし、これは一体何だったのだろう。一軒一軒の郵便受けにこれを投函していったのだろうか。ほとんどの家は、抒情詩とやらとは無関係なのに。それとも、私がこっそり詩を書いていることを知っていて、嫌がらせするつもりだったのだろうか。いずれにしても、一人称として複数形を使っているので、この文書が何らかの結社の「マニフェスト」だったことは間違いないようだ。




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バランス



彼らとしては、 既成事実を作ることが、 差し当たりの目標。 慣らしてしまえば、 どうせ麻痺する。 戦争がそんなに儲かるなんて、 知りませんでしたよ、 不勉強なことで、 失礼しちゃったことでした。 しかし薬が効くまでは、 寝た子の目を覚ますようなことは、 したくないとのことのようで。 だから隊員が死なないように、 今まで他人のために、 そこまで真剣になったことはない、 というくらいに真剣に、 神頼み。 薬が効いてからなら、 いくら死んでもかまわないけれど、 今だけは死なないでくれ、 と神頼み。 私としては、 おおむね逆を考えておりまして、 彼らに殺されたくない、 殺される人を見たくない、 という気持ちはまじめなものだと 信じたいのですが、 時々ちょろっと悪い考えが、 頭をもたげる。 今死んだら、 大騒ぎになるぞ。 彼らの思惑通りにはいかなくなるぞ、 希望的観測かもしれないけれど。 殺されたる人を見たくない、 という気持ちはまじめなものだと 信じたいのですが。




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病気



去年の病気は去年の病気で、 今年の病気はまた別のものなのだ。 とは言っても、 去年の病気が治ったわけではなく、 もう飽きてしまっただけ。 飽きてしまうと、 かかっていることも忘れられるのだ。 去年大騒ぎしたのが 馬鹿馬鹿しく思えることよ。 そんなものは、 きっと病気ではなかったのだ。 来年になれば、 今年の病気も忘れているのだろう。 そしてどこからともなく、 新しい病気を見つけ出して、 後生大事に育てているに違いない。




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飲酒習慣



長い間、家では酒を飲まなかった。 深い理由はないが、 連れ合いがたまたま酒を飲まない人だったとか、 健康診断で脂肪肝だと言われてびっくりしたとか、 そんなこんなで何となく飲む習慣にはならなかった、 というだけのこと。 友達が遊びに来るからというので用意した洋酒とか、 その友達が土産に持ってきてくれた洋酒とか、 その日が過ぎると食器棚の奥にしまいこんで、 そのままになっていた。 それが最近になって毎日飲むようになった。 一年くらい前から、眠るのに苦労するようになって、 医者に頼み込んで眠れる薬をもらっていたら、 止められなくなっていて、 ちょっと恐くなったので、 薬の代わりに酒を飲んでみたわけ。 考えてみれば、 薬代よりも酒代の方が安いし、 最初のうちは買わなくても酒はあるし、 悪くないアイディアだよ。 おかげで薬はすぱっと止められたけれども、 酒が止められなくなった。 昼間、しらふの時でも、 ウィスキーやブランデーの匂いの記憶がふわっと蘇る。 アル中になりかけてるんじゃないかと ちょっと恐くなるけれど、 一日一杯だけだし、 そんなことはないだろうと思うことにして、 止めていない。 ブランデーを一本空にして、 ウィスキーを一本空にしたところで、 そろそろ次を買わないといけないなあと思っていたら、 連れ合いがまだあるわよと、 食器棚の奥の奥から死蔵されていた洋酒を出してくれた。 十年以上も前に友達が土産に持ってきてくれたブランデーとか、 「洋酒特級」なんてラベルのついたウィスキーとか。 その友達というのは、 当時はまだ独身だったけれど、 今では子供が幼稚園に通っているぜ。 そんなに放っておいても、 ウィスキーやブランデーはちゃんと飲めるところがえらい。 かくして、止まっていた小さな時が一つ、動き始めたというわけ。 多くの時が動いたり止まったりするのを見過ごしてきたはずだけれど。




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あとがき



ここまで来て、まだ七〇ページに達していないということには愕然とするが、今この時点で一区切りつけて、先に進みたいのである。できれば、これからは一人でぶつぶつ文句を言っているようなものではないものになって欲しい。一応、そのための布石は打ったはずなのだから。

二〇〇五年四月一日  長尾高弘


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