1997N428句(前日までの二句を含む)

April 2841997

 人体冷えて東北白い花盛り

                           金子兜太

北の旅先での空気の冷たさと花の盛りを「人体冷えて」と「白い花盛り」でうまく表現した句。初心者だと叱られる上5の字余りも「人体」という言葉の選択により逆に効果的か?(本当はよくわからない。)俳句の「花」は桜であるが、多くの植物が一斉に花開く北国で作者がみた「花」はりんごや梨の白い花も含んでいただろう。なお、東北に住む人の感じる花は「冷えて」の「花」ではなく、暖かい土地の人以上に「心浮き浮きする花」である。その意味で掲載句はあくまでも旅の句である。(齋藤茂美)


April 2741997

 チューリップ散って一茎天を指す

                           貞弘 衛

稚園や小学校の校庭の花壇に並び、子ども達と一緒に遊んだチューリップもそろそろ散り始める。愛らしく影ひとつない明るさが、学び始める子どもの心に溶け込む花だが、散ってしまえば誰も振り向かない。さびしく茎だけが天を指している。子ども達が何十年も後に知る心境である。(板津森秋)


April 2641997

 頬よせて四つ葉のクローバー多感なり

                           柴田美代子

に描いたような少女像。四つ葉のクローバーを見つけた友だちと、頬寄せ合って眺め入っている少女たち。そんな光景を、作者はほほえましく見つめている。その一方で、みずからの多感期を思い出しているのでもある。もう少し深読みしておけば、幸福の象徴とされる四つ葉を見つけたからといって、少女の未来の幸福が保証されるわけではない。当たり前の話だ。が、そのことに、言いようのない切ない感情がわいてくるのを止めることができないでいる……。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます