R@句

September 1791999

 添水鳴ると気のつきしより添水鳴る

                           西山 誠

名を「鹿威し(ししおどし)」「ばったんこ」などという「添水(そうず)」の鳴る原理は簡単だが、短い言葉で説明するとなると難しい。辞書に頼る。「一方を削って水がたまるようにした竹筒に水を落とし、その重みで支点の片側が下がり、水が流れ出すとはね返って、他の端が石などを打って音を出す装置」(『現代国語例解辞典』小学館)。元来は田畑を荒らす鳥獣を威す、いわば案山子の音響版であった。ほとんどの歳時記で、案山子の項目の隣に置かれているのは、その故だろう。が、いまでは日本庭園の風流味をかもし出すための小道具的な存在となった。詩仙堂にもあり、苔寺にもある。「添水」の音にかぎらないが、音というのは不思議なもので、規則的に響いている音ほど、耳に入らないことがある。昔はどこの家にもあった柱時計の音もその一つで、深夜目覚めたときなどに、ひとたび気になりだすと眠れなくなったりしたものだ。この句もそういう種類のことを言っていて、風流を感じる心とは別の次元で「添水」をとらえているところが面白い。(清水哲男)




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