c繧、句

June 0362000

 夕暮に白妙ふるへ月見草

                           藤間綾子

んだ途端に「あれっ」と思った方もおられると思う。「月見草」の花が「白妙(しろたえ)」とは、はて面妖な。黄色い花じゃなかったの、と。かくいう私も、実はついさっきまで知らなかったのですから、偉そうなことは言えません。月見草の花はまさしく「白妙」であり、暗くなると淡い紅色に変化するだけで、黄色とは無縁。河原などに自生していて、私(たち)が月見草と思い込んでいる黄色い花は「待宵草(まつよいぐさ)」と言い、同じアカバナ科ながら品種は異なるのだそうな。本物の月見草は、待宵草のような逞しさがないので野生化せず、いまではごく一部で栽培されているのみ。ということは、めったに見られない花ということになり、たぶん私は見たこともないのだろう。阪神タイガースの野村克也監督が自身を月見草になぞらえた話は有名だけど、あれはどっちの(笑)月見草だったのか。本物のなよなよした白い花ではなくて、偽物の逞しさを言ったように思われますが……。長く生きていても、知らないことはたくさんありますねエ。本物で、もう一句。「月見草見つめられゐて紅さしぬ」(杉田りゅう)。青柳志解樹『俳句の花・下巻』(1997)所載。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます