@句

October 05102004

 秋草の思ひ思ひに淋しいぞ

                           島村 元

日、若い友人で文芸評論家の小笠原賢二君が亡くなった。以下、「東京新聞」の電子版より。「小笠原賢二氏(おがさわら・けんじ=文芸評論家)4日午前8時40分、肺がんのため東京都立川市の病院で死去、58歳。北海道出身。自宅は東京都日野市南平1の23の8。葬儀・告別式は6日午後2時から東京都台東区下谷2の10の6、法昌寺で。喪主は妻かず子(かずこ)さん。/短歌を中心として現代社会と文学の問題を論じた。著書に「終焉(えん)からの問い」「拡張される視野」など」。かつては「週刊読書人」の優れた編集者であり、私たちの野球チーム「ポエムズ」の仲間でもあった。野球をやめてからは一度も会う機会がなかったが、常にひたむきな表情の似合う男であった。念願かなって某大学で講座を持つ矢先の入院だったと聞いていたし、これから書きたいこともたくさんあったろうにと思うと、早すぎた死ゆえに胸が痛む。まこと掲句のように、私は私なりに「淋しいぞ」とつぶやくことになった秋である。生きていてくれさえすれば、たとえ会わなくたって淋しくはないのだ。寿命と言えばそれまでながら、とにかく年下の人に死なれるのは辛い。これまで、もう何人の若い友人知己と別れてきただろう。いやだなあ……。暮れかけた庭の「秋草」を、冷たい雨が濡らしているのが見えている。合掌。『新歳時記・秋』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)




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