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November 30112004

 綿菓子の糸の先まで小春巻く

                           高井敏江

語は「小春」で冬。陰暦十月の異称で、まるで春のような穏やかな日和のつづくことから、小さな春と呼ばれるようになった。そんな日和の様子を捉えて、掲句は実に巧みだ。縁日か何かで綿菓子(わたあめ)を売っている。機械でくるくると巻かれていくのが、小春そのもののように、作者は感じている。それも、細い「糸の先まで」巻かれていくと言うのである。いかにも柔らかく繊細な小春のありようが、綿菓子との取り合わせにぴったりと溶け合っているではないか。こんな感受性を持っていたならば、さぞかし日常的にいろいろな発見ができて楽しいだろう。羨ましい限りである。またぞろ貧乏話で恐縮だが、私は子供のときに綿菓子を食べたことがなかった。村祭りの屋台には出ていたが、高すぎて買えなかった。いつかは食べてみたいと思いながら、実際に口にしたのは三十歳を過ぎてからである。子供がよちよち歩きをはじめたころに、町のお祭りで子供のために買うふりをしながら、実は自分のために手にしたのだった。どきどきしながら口にしたことを覚えている。正直言って美味いとは思わなかったけれど、持って歩いているだけで華やいだ気分になれることに満足した。どこのどなたの発明かは知らないが、あれはたいした発明である。さっき綿菓子機の値段を調べてみたら、ちょっとしたものでも十万円以上はしていた。一般家庭で、気軽に小春を巻くわけにはいかないようだ。『新版俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)




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