PcQ句

March 2732005

 石蹴りの筋引いてやる暖かき

                           臼田亜浪

石けり
語は「暖か」で春。暖かいかと思えば寒くなったりと,春先の気温はなかなか一定しない。そんな時期がようやく過ぎて,心地よい暖かさの日が訪れてきた。上機嫌の作者は,「石蹴り」遊びをはじめようとしている子供たちを手伝って,「筋」を引いてやっている。舗装された道路などでならロウセキかチョークで、土の道や庭でなら棒切れか何かで……。いずれにしても、大の男が頼まれたわけでもないのに,そんなふうな気まぐれ心が起きたのも、春らしい程よい「暖か」さのためである。たまには、無邪気な句もよいものだ。ところで、この石けり遊び。多くの人が日本の伝承遊びだと思っているようだが,日本での歴史は意外にも浅い。明治期に入ってから,外国から輸入された戸外ゲームだ。教育的な効果があるというので、学校を通じて全国的に広められたらしい。発祥の地は、実は古代ローマ帝国時代のイギリスだった。それも最初は兵士の脚力のトレーニングのために開発されたもので、それを子供たちが真似てミニチュア化したものが、遊びとして全ヨーロッパにまず定着したのだった。英語では"hopscotch"と言い、国によってそれぞれの呼び名は違っているけれど、基本的なルールは似たり寄ったりである。写真は、アメリカのサイトから借用したもの。ここには、各国での遊び方も紹介されている。日本の「石けり」は昨今すっかりすたれた格好だが,これを見る限り,彼の地ではファミリー・イベントなどでもよく行われているようである。『新歳時記・春』(1989・河出文庫)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます