Vミろし句

January 0812007

 成人の日の総身に釦かけ

                           大澤ひろし

支度を整え、これから成人式に出かけようというところだろう。成人の日の句は多いが、新成人当人が詠んだ句は珍しい。いつごろの句かわからないが、「総身に釦(ぼたん)かけ」とあるから、作者が着たのは詰襟の学生服だろう。となると、昭和三十年代くらいの作句だろうか。私の頃も、男はほとんど学生服で出席した。懐かしや。普段でもむろん釦はみなかけるのだけれど、かけ方は無造作だ。しかし、今朝は違う。晴れの場に出るとあって、とくに念入りに確認するようにしてかけたというわけだ。既にコートを着ているのであれば、その釦もきっちりと……。現代の若者ならば、特にていねいにネクタイを結ぶといったところか。昔の若者の純な気持ちも良く出ていて、晴れやかな気合いのこもった佳句である。ところで最近、政府与党から成人年齢を十八歳に下げようという声があがっている。共産党も以前から主張しているが、そう簡単に賛成するわけにはいかない。国際的に見ると、たしかに十八歳で成人という国が多い。だから下げようというのも変な話で、日本は日本流で行くべきだ。これからの日本社会のことを考えると、十八歳の成人には権利よりも多くの重い義務がかぶさってきそうだからだ。現今の風潮からすれば、そのなかには兵役の義務が含まれてくる可能性もあるのだから、若者よ、飲酒喫煙の自由などの目先のニンジンにはくれぐれも騙されないように。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)




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