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March 2832007

 干されある君の衣に触れて春

                           ペール・ヴェストベリィ

本とスウェーデン両国初の俳句アンソロジー『四月の雪』から選んだ。原句の直訳は「通りすがりになでた/あなたのスカート/乾す綱の上」(舩渡和音訳)。これを清水哲男(日本側選者)が上掲のように季語を入れて翻案した。作者は1933年生まれの男性としかわからない。春の陽が燦々と降るなかに干されている衣(スカート)に、通りすがりに気持ちよくさらりと触れたというのだ。触れることによって春を今さらのように実感している。健やかな春の陽と風に、「わたし」も「君の衣」もまるでスキップでもしているようなリズム感があふれている。「君」だから、ガールフレンドのスカートだろうか。奥さんか娘さんのスカートでもかまわない。いやらしさは微塵もない。むしろ微笑ましい。ここには陽射しが貴重な北欧の春がある。素直な春の喜びがしなやかに表現されている。原詩に季語はないけれど、ここはやはり「春」こそぴったり。同書の前書きによると、スウェーデンでは1950年代から本格的な句作が始まった。季語は定められていないという。オン・デマンド出版による本書には、日本とスウェーデンの俳句がそれぞれ100句ずつ収められている(スウェーデン語訳と日本語訳付き)。俳句が今や、洋の東西を問わず盛んであることは改めて言うまでもない。この作者のもう一句「水桶の水に浮かべて春の月」には、江戸情趣さえ感じられる。『四月の雪』(2000)所収。(八木忠栄)




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