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July 2372009

 ベルリンの壁の破片や夏期講座

                           中村鈴子

が小さい頃、ベルリンの壁は冷然と存在していた。家族に会うために壁を越えようと逮捕された話、銃殺された話。壁一枚で祖国分断される理不尽さを社会の授業で何度か聞かされた。ベトナム、朝鮮、ドイツ、第二次大戦から冷戦にいたる分断の構造が続いていた時代、ソ連や東欧諸国がいまのような枠組みになるとは誰も考えていなかっただろう。ベルリンの壁が壊される映像は感動的で新しい時代が来る予感の高まりに誰もが興奮したに違いない。それから20年。すでにベルリンの壁の破片は歴史的遺物になり夏期講座の机の端に置かれている。東西冷戦構造の説明のあと、先生は壁の破片を持ち上げて言うのだろう。「これがベルリンの壁の一部です」受講する生徒たちにとってその破片から当時の世界を想像できるか、夏期講座を受けている今の現実につなげることができるか。あとは生徒たちの想像力次第ということだろう。『ベルリンの壁』(2005)所収。(三宅やよい)




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