ヨ田句

October 10102009

 秋晴や攀ぢ登られて木の気分

                           関田実香

前は体育の日であった十月十日。東京オリンピックの開会式を記念して定められたこの日に結婚した知人の体育教師は、ハッピーマンデー制度で体育の日が毎年変わることになり困惑していたが、月曜に国民の休日がかたよるのもまことに一長一短だ。十月十日は晴の特異日とも言われているが、確かに十月の秋晴の空は、高くて深い。掲出句、よじ登られているのは母であり、よじ登っているのは我が子。〈八月の母に纏はる子は惑星〉と〈秋燈を旨さうに食む赤子かな〉にはさまれているといえばよりはっきりするが、一句だけ読んでも見えるだろう。吸い込まれるような青さに向かって、母のあちこちを掴みながら、その小さい手を空に向かって伸ばす我が子と絡まりながら、ふと木の気分だという。母とは、木のように大地に根を張った存在だ、などというのではなく、まさにそんな気分になったのだ。ただ可愛くてしかたないというだけでない句、作者の天性の感受性の豊かさが、母となってさらに、よい意味でゆとりある個性的な詩を生んでいると感じた。「俳句」(2009年8月号)所載。(今井肖子)




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