June 1562010

 受付に人のとぎれし水中花

                           高木聰輔

まで気づかなかった水中花のボトルが見えた瞬間に、さきほどまでの混雑ぶりがあらわになる。現在を描くことで過去を連想させている。水中花が感じさせる無機質な冷たさと、ゆったりともひしめくとも見える生々しい感触は、通り過ぎた時間をそのまま封じ込めているようで、どこかこころもとなく眺めている作者の視線を感じさせる。「受付」とはまたその中に座る人の存在を予感させるものでもある。入口から始まるスムーズな動線は、来訪者をまっすぐに受付へ導き、さらに希望の場所へとさばいていく。分岐の現場はなかなか定石通りにはいかず、臨機応変や当意即妙という豊かな経験からくる対応が求められながら、「受付嬢」というきらびやかな言葉が残るように、若さや美しさも同時に要求されるのも事実であろう。容姿端麗で礼儀正しく、忙しいときでも暇なときでも常ににっこりと座っていなければならないことを思うと、水中花のわずかなゆらぎが受付嬢の屈託のようにも見えてくる。『籠枕』(2010)所収。(土肥あき子)




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