Nリ否子句

November 25112010

 偵察衛星大根が煮くずれる

                           櫻木美保子

近、探査機「はやぶさ」が小惑星に着陸し採集した物質を持ち帰り話題になった。掲句では煮くずれる「大根」と「偵察衛星」という摩訶不思議な取り合わせだけど、その飛躍の大きさに何となく惹かれる。なぜ作者は煮くずれる大根を見て偵察衛星に考えがいたったのだろう。「偵察衛星」だから「はやぶさ」のように未知の世界に出かけるのではなく、地球の周りを回りながら、こっそりとある場所の映像を送り続けているのだろう。その地表のイメージを煮崩れる大根に重ねているのか。作者の胸の内は想像するしかないけど、大根をことこと煮込む時間と地球を廻り続ける衛星の単調な時間が重なりあったのだろう。台所にある日常が不穏さを持った別の世界へ引き延ばされる感じがする。『だんだん』(2010)所収。(三宅やよい)


January 0712016

 人日の鳥のぼさぼさ頭かな

                           櫻木美保子

月七日は「人日」なぜこのように呼ぶのか。「一日には鶏、二日に狗、三日に羊、四日に猪、五日に牛、六日に馬、七日に人を占い八日に穀を占う。毎日の天候によって動物や人の一年を占い皆、清明温和な天候であれば畜息安泰、陰寒惨烈なら疾病衰耗と為す」と平井照敏の「新歳時記」に説明がある。「人日」という言葉を知ったのは俳句を始めてからで、七日と言えば七草粥を食べ、学校が始まる日と思っていた。鳥のぼさぼさ頭と言えば、ウッドペッカーやスヌーピーのウッドストック、はたまたハシビロコウが思い浮かぶ。ぼさぼさ頭が寝起きの頭のようで愛嬌がある。きっと人間が動きだす日なんぞ鳥には関係ない、とシニカルなまなざしでのんびり眺めていることだろう。『だんだん』(2010)所収。(三宅やよい)




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