February 0522011

 鉛筆をまだ走らせず大試験

                           高瀬竟二

試験は、入学試験、卒業試験、進級試験などをいうが、現在は俳句にしか見られない言葉だろう。二月から三月はどうしても、受験や大試験の句に目がいってしまう。この句は、大切な試験なのだからともかく問題を熟読、慌てないでよく考え構想を練ってから書こう、という落ち着いた様子とほどよい緊張感が感じられる。つい、試験監督をしている視点で読むと、走らせず、にやや不安感が見え、試験が始まってしばらく経つのに鉛筆を握りしめたままかたまっている受験生が見えてしまう。でもここは、走らせないのは意志であり、沈思黙考する姿は溜めた力を一気に出して合格することを暗示している、と読みたい。『初鶏』(1998)所収。(今井肖子)




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