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May 1252011

 筍が来てごろごろとしてゐたる

                           水田光雄

かつにも結婚するまで筍を掘ったことも、煮たこともなかった。連れ合いの里にある竹林はうかうかしていると山から下りてきた猪が鼻先で土をえぐって食い荒らしてしまうので早々に収穫して遠くの都会に住む子供たちへ送られる。掘り起こされた筍が宅急便でどかんと台所へ届けられた日には糠や唐辛子を用意し、大鍋を引っ張り出して右往左往した。それでも回数を重ねるうちにこの季節が楽しみになってきた。田舎の土をつけて筍がやってきた日には何をおいても下茹でしなければと気がせく。若竹煮、筍ごはん、木の芽和え、お吸い物。あっさりと炊いてちらし寿司に入れるのもいい。「筍が来て」と、送ってくれた人ではなく筍を主体としたことで、荷を解いて転がり出た筍たちがすぐ料理してくれ、うまく食べてくれと台所に転がってねだっているようで楽しい。『田の神』(2004)所収。(三宅やよい)




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