ロ科射子句

November 07112011

 サイドカーに犬マフラーをひるがへし

                           保科次ね子

日は立冬。マフラーの季節になってきた。句は実景だろう。いや、実景でないと面白くない。服を着せられた犬が散歩している姿はさして珍しくないけれど、マフラーを巻いた犬までがいるとは驚きだ。子供の歌に、雪が降ってくると「犬はよろこび庭かけまわる」とあるから、元来犬は寒さに強いと思っていたのだが、寒がりの犬もいるのだろうか。北風の中をオートバイで走ればたしかに寒いから、サイドカーに乗せた犬の飼い主としては、人間と同じように寒かろうとマフラーを巻いてやったのだろうが、作者はそういうところを見ているのではなくて、そのマフラーを翻している姿に着目している。格好いいなあと、去ってゆくサイドカーを見送っている。私はすぐに、マフラー姿のスヌーピーがバイクを飛ばして得意になっている図を連想した。ただスヌーピーとは違って、現実のこの犬は、どんな顔をしていたのだろうか。まさか得意顔ではないだろうし、むしろ迷惑そうな顔つきだったかもしれない。だとすれば、哀れでもあり可笑しくもある。あれこれ想像できて、愉快な一句だ。『しなやかに』(2011)所収。(清水哲男)




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