ROY句

November 16112011

 満月を浴びて少年探偵団

                           嵐山光三郎

ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団/勇気りんりん瑠璃の色……この主題歌は今でも耳にしっかり残っていて、歌えば年甲斐もなく心がワクワクドキドキしてくる。映画化され、テレビでも連続放映された、言わずと知れた江戸川乱歩作「怪人二十面相」。名探偵明智小五郎を補佐する小林少年を団長とする「少年探偵団」の登場である。同世代の光三郎も、きっとワクワクしながらこの句を作ったにちがいない。「ぼ、ぼ、ぼくら……」の"bo"音の吃るように連続する響きに他愛もなく、それこそ「ぼ、ぼ、ぼくら」はかつてたやすく電波に攫われてしまっていた。それに「りんりん瑠璃の色」と"r"音が連続する。しかも外は満月。「ぼ、ぼ、ぼくら」の連続音に誘われるように、夜空に高く満月は昇ってくる。そして満月に怪しい姿を暗躍させる怪人二十面相が、見えてきそうではないか。今夜もこれから事件が起きて、少年探偵団が活躍することになりそうな予感がする。こちらの気持ちも若返って胸が高鳴ってくる。掲句は光三郎が中学三年生のとき、ガリ版刷りの文芸誌に発表したものだという。いかにも少年らしい明るさがある。ほかに光三郎句「あまぎ嶺に谺し冬の鳥射たる」がある。「俳句界」(2011年11月号)収載。(八木忠栄)




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