u句

February 0822012

 かじかむや寄る七星はひくくして

                           棟方志功

い夜の北斗七星が、それぞれ特別に身を寄せ合っているというわけではない。けれども寒さが厳しいから、あたかも身を寄せあっているように感じられるのであろう。しかも空気が澄んでいるから、星がことさら大きく地上にずり落ちそうに、迫っているように低く感じられるというのである。実際、七星は春夏には北斗星よりもずっと高い位置にあるが、秋冬には地平線まで低くずり落ちて、見えにくい位置になっている。板木(志功は「版木」とは呼ばなかった)に、全身這うように顔をこすりつけるようにして描きあげ、彫りあげてゆく志功独特の制作の姿が、この句にかぶさり重なっているようにさえ感じられる。ノミを握る手はかじかんでいるから、いっそうダイナミックに大胆に彫りあげているものと思われる。志功は俳句を二十代で始めたが、原石鼎や石田波郷、永田耕衣たちの作品に触発された美術作品を発表していた。とりわけ前田普羅との付き合いが深かったと言われる。「渦置いて沈む鰻や大月夜」という句などは、志功の絵そのものの力強さを感じさせる。『みんな俳句が好きだった』(2009)所載。(八木忠栄)




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