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December 31122012

 大晦日御免とばかり早寝せる

                           石塚友二

十一歳の秋に、ラジオのパーソナリティを仰せつかった。早朝番組だったので、以来三十有余年、早寝早起きの生活がつづいている。大晦日とて、例外ではない。この間、除夜の鐘も聞いたことがない。子どもの頃には、大晦日はいつまで起きていても叱られなかったから嬉しかったが、そんなことももう遠い思い出だ。作者が「御免」と言っている相手は、とくに誰かを指しているのではなく、遅くまで起きて年を守っている世間一般の人々に対してだろう。この気持ちは、なんとなくわかる。早寝しようが勝手ではあるものの、いささか世間の常識に外れているような気がして、ちと後ろめたいのである。だから一応、「御免」の気持ちで寝床にもぐり込むことになるのだ。孝子・フォン・ツェルセンという人の句に、「子の去りてすることもなし年の夜」がある。これは今宵の我が家そのもののありようである。そういうわけで、では、御免。みなさまがたには佳いお年をお迎えくださいますように。『合本・俳句歳時記・第三版』(1997・角川書店)所載。(清水哲男)




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