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January 1212013

 大空に月ぶら下がり雲凍てぬ

                           池上浩山人

そらく半月と動かない凍雲、冴え冴えとした景である。凍つる雲と、その雲を照らすほどではない寒々とした月、その二つが一対の景をなして広々とした真冬の空と大気を感じさせている。儒子を父に持ち儒学にも明るかった作者であると知ると、中七から下五にかけて確かに漢詩的な印象だ。また、ぶら下がる、という表現は、伝統的な美と格調を重んじたという作風とはやや違っているようにも思えるが、古書修理の職人であった作者の、まさに見たまま感じたままの言葉であり、滲むことも強く光ることもない冬の半月の形のありのままを表していると言える。今日は今年最初の新月、先週末の真夜中に見た半月を思い出している。『新日本大歳時記 冬』(1999・講談社)所載。(今井肖子)




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