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July 0972013

 帆を張れば船膨らみし青葉潮

                           河原敬子

日、日本丸の総帆展帆(そうはんてんぱん)を見に行く機会があった。青空の下、一時間ほどかけて乗組員たちの掛け声とともに29枚すべての帆を広げた帆船は、見ているものの誰もが息をのむ美しさだった。それはまるで、大きな蝶が羽化しているさまを目の当たりにしているような、帆船が帆船として息を吹き返しているような、なんとも不思議な時間が海の上に流れていた。かつてはその姿の美しさから「太平洋の白鳥」と称されたとの説明を読み、そのとき感じたどこと言えない胸のわだかまりがなんであるかに気づいた。それは、船が繋留されたままであるという不自然さだった。太平洋の白鳥は岸に繋がれたまま羽を広げていたのだ。動物園に飼われた雄々しい動物を見るときに感じる胸の痛みであった。総帆展帆して帆を風に膨らませても進むことは叶わないのだ。いつか大海に浮かぶ帆船の本当の美しさを見ることはできるだろうか。〈サングラス外しほんたうの海の色〉〈花の名を後ろ送りに尾瀬の夏〉『恩寵』(2013)所収。(土肥あき子)




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