@T句

October 17102013

 大学に羊生まれぬ秋の風

                           押野 裕

学になぜ羊がいるのだろう?農学部の牧場なのかドリーのように実験用の羊なのか。この句の眼目は羊が生まれた場所と季節だと思うが、普通羊は秋に交配時期が来て春に生まれる。とすると、この子羊は「大学」で何らかの処置をほどこされた親羊から生まれたのではないだろうか。そう考えると秋生まれの羊が人工的で華奢な存在に思われる。春に生まれた動物は気温も高くなり食べ物も豊富に育つが、秋生まれの子羊には厳しい生活環境がすぐやってくる。野良猫の場合も秋生まれの仔猫はほとんどが死んでしまうそうだ。これからの寒さの予感を感じさせる秋風のあわれさが子羊の存在の弱弱しさを暗示しているように思われる。『雲の座』(2011)所収。(三宅やよい)


November 21112013

 休日出勤冬木の枝の燦々と

                           押野 裕

さっては勤労感謝の日。「勤労を尊び感謝する日」が土曜日と重なっているけど、休日出勤の方もいるかもしれない。皆がのんびりしている休日に電車に乗るといつもは混んでいる時間帯も座れるぐらいすいている。向かいの窓からは冬木の梢が凛と輝いて見える。「休日出勤」と言っても平日に代休がある出勤と普段の仕事が片付かないで休日に出てやるのを余儀なくされるのではだいぶ事情が違う。後者の場合は、下手をすると休みなしで連続して仕事をしないといけないわけで、冬木の枝が輝くのを見ている心持も嬉しいとは言えないだろう。そう思うと「燦々」と輝く冬木と鬱屈した気持ちとの対比がより際立ってくるように思う。『雲の座』(2011)所収。(三宅やよい)




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