ロ山@O句

November 06112013

 モカ飲んでしぐれの舗道別れけり

                           丸山 薫

ごろの時季にサッと降ってサッとあがる雨が「しぐれ(時雨)」である。「小夜時雨」「月時雨」「山めぐり」他、歳時記には多くの傍題が載っている。それだけ日本人にとって身近な天候であり、親しまれている季語であるということ。しぐれは古書にもあるように「いかにももの寂しく曇りがちにして、軒にも雫の絶えぬ体……」(『滑稽雑談』)といった風情が、俳句ではひろく好まれるようで、数多く詠まれている。丸山薫には俳句は少ないようだが、「モカ」にはじまって「しぐれ」「舗道」とくるあたり、どこかロマンを感じさせる道具立てである。詠まれている通り、何やら長時間モカコーヒーを飲みながら話しこみ、しぐれで濡れている舗道で淋しく別れたのである。若い男女であろう。題材も詠み方もとりたてて変哲がある句とは言えないけれど、これはこれでさらりと詠まれていてよろしいではないか。「モカ」というと、どうしても寺山修司の歌「ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし」を避けて通れない。芥川龍之介の句に「柚落ちて明るき土や夕時雨」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)




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