@句

February 0522014

 ひらがなの筆跡で舞う細雪

                           葛西 洌

(俳号:洌浪)は青森市に生まれ、三十五歳頃まで青森県で過ごしていたから、その地に降っている雪のことを詠んでいるのかもしれない。「細雪」は書いて字のごとく細かい雪である。雪には綿雪・牡丹雪・粉雪・細雪など、気温や土地によってさまざまな結晶の仕方があり、形状もいろいろであることは言うまでもない。「ひらがなの筆跡」のたとえはきれいだ。そのように細かく、途切れることなく、軽く繊細にしなやかに「舞う」とうわけである。漢字のようにどっしりして、またカタカナのようにきらびやかでトゲトゲしい雪ではない。洌がひらがなにこだわった詩がある。その一節に「ひらがなでもの想う日は/もっと遠くを見ていたい//遠くを見るということは/さらにその先に続く道があり/道の先は/ひらがなの筆跡のように切れることがない/……」(「もっと遠い所」)とある。彼は「ひらがな」という語に心とらわれていた時期があったらしい。他に「ひらがなでもの想う朝梅実る」がある。2013年に七十六歳で亡くなった。「長帽子」75号(2013)所載。(八木忠栄)




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