テ窓

March 0132014

 片方が動けば動き春の猫

                           上野嘉太櫨

の恋、の傍題は他に、恋猫、うかれ猫、などあるが、その中で、春の猫、というと少し印象が違う感じがするのは、春、という言葉の持つ明るさのせいだろうか。この句も、恋の猫、とか、猫の恋、となっていれば、一匹の雌猫をめぐって戦う二匹の雄猫がリアルに浮かぶが、春の猫、とすることで、そこに生々しさよりも早春の喜びがより強く表される。『現代俳句全集 第二巻』(1954・創元社)にあったこの句の作者は、川端茅舎に師事したとあるが他に<癇癪のほとばしるまゝ麦踏に>など、おもしろい切り取り方をした句が残っている。(今井肖子)




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