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March 0832014

 啓蟄や土まだ知らぬ嬰の足

                           吉田一郎

どりごの手足は、小さいのにちゃんと手足という当り前のことも含め、限りなく愛おしい。目の前に置かれたそんな手足を見つつふと自分の足に目をやれば、長きにわたり大地を踏みしめ自重を支え続けてきた我が足は逞しく、足の裏は固い。この子もやがて自分の足で立ち様々なことの待つ人生を歩いていくのだ、と思うとより愛おしさが増すのだろう。雛を納めると啓蟄。最低気温が五度を下回らなくなるとそちこち冬眠から覚めるらしいが、週間予報を見ても東京ですらまだまだ寒い。この先、冬と夏が長くなり春と秋は短くなっていく、などという説もありやれやれだが、それでも日々明るい何かを待ちながら過ごす三月である。『未来図歳時記』(2009・ふらんす堂)所載。(今井肖子)




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