H@i句

August 1982014

 天の扉を開けて星降るビアガーデン

                           工藤 進

うまでもないことながら、ビアガーデンの定義は屋外である。開放的な空間で、わいわいがやがやとジョッキを掲げる。ビアガーデンの発祥は昭和12年、ニュートーキョー数寄屋橋本店屋上だといわれ、以来毎年の夏の都心を彩ってきた。冷房完備、個室優勢の現代でも、人は折々夜風に吹かれ、ビールに喉を鳴らしたいときがある。ビジネスマンが仕事帰りに集うことが多いため、駅前のビルやデパートの屋上など、交通に便利な場所が多いが、都心を離れた場所で人気のビアガーデンもある。高尾山のケーブルカー降り口にある高尾山ビアマウントは標高500メートル。夜空には星が輝き、地上の夜景も見渡せる。掲句は「天の扉」としたことで、特別な空間が生まれ、また、満天の夜空からこぼれ落ちる星を掲げるジョッキで受けるような豪快な美しさを伴った。〈百草に百種のこゑ秋澄めり〉〈秋の七草夕日を束ねてゐたりけり〉『ロザリオ祭』(2014)所収。(土肥あき子)


September 1192014

 涼新た卓布に木の匙木のナイフ

                           工藤 進

のテーブルクロスは真っ白に洗い上げた白のリネンでパリッとアイロンが当たっていそう。その上に揃えてある木の匙と木のナイフは手の温もりが感じられる。このテーブルに集う人から新たな物語が始まりそうだ。「涼し」はたまらない暑さにふっと感じる涼気だけれど、「新涼」は日常的に爽やかさな空気が感じられること。日差しはまだ強くとも、朝晩の涼気は秋のものだ。掲載句では物と物との質感の対比がくっきりしていて「涼新た」という爽やかな言葉を生かしている。ひんやりとした空気に、本格的な秋の訪れを感じる頃、こんな食卓で景色を眺めながらゆったりと食事をしてみたい。『ロザリオ祭』(2014)所収。(三宅やよい)




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