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September 0292014

 森密に満月入れるほどの隙

                           坂口匡夫

の語源が「盛り」であるように、木が密集している場所を意味する。夜とはいわず、昼でさえ暗いような場所にあって、満月が光りをこぼす。闇のなかであるからこそ、わずかな光りがひときわ明るく見えるのだが、そのあまりの美しさに、まるで重なり合う木々がおのずから月光を通すために隙間を作っているように感じられるのだ。来週が満月となる今宵はちょうど半分の月。森の木々があっちに詰めたり、こっちに身を寄せたりして、満月の居場所を作っているところだろう。〈月の歌唄ひつつゆく子に無月〉〈鰯雲忘るる刻がきて忘る〉『沖舟』(1975)所収。(土肥あき子)




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