昨朝の東京三鷹は4.4度と冷え込んだ。今朝も同様との予報だ。(哲




2014N1115句(前日までの二句を含む)

November 15112014

 七五三しつかりバスにつかまつて

                           綾部仁喜

+五+三=十五、だから十五日に七五三を祝う、というのは俗説のようだが、枯れ色の深まっていくこの時期、七五三の小さな晴着姿は色鮮やかで目を引く。七五三というと、そんなかわいらしさや着慣れないものを着て疲れて眠った姿などが句となっているのをよく見るが、この句の切り取った風景は極めて現実的だ。目に浮かぶのは作者の視線の先の子供の横顔と、太すぎるパイプをぎゅっと握りしめている小さな手。バスは揺れ、そのたびに転ぶまいとこれまた履きなれない草履の両足を踏ん張る。バスにつかまる、というのはかなり大胆な省略だがリアリティがあり、子供から少女へ、さらにその先の成長をも感じさせる七五三ならではの一句となっている。藤本美和子著『綾部仁喜の百句』(2014)所載。(今井肖子)


November 14112014

 帰る家が見つかったかいつばめさん

                           如月はつか

に燕は遠く台湾や東南アジアより飛来し秋には帰る。「燕」が春の季語なら「帰燕」は秋の季語である。日本の各地で子を孵し育てる。夏の間市街地や村落で育った若い燕も次第に郊外の河原の葦原、海岸、湖沼などに集まる。ここに子育てのすんだ親鳥たちも合流し大群となり日本を離れてゆく。慣れ親しんだ彼らも今は帰り、街は心なしか淋しくなった。遠いお国に無事着いて安住の家が見つかっただろうか。旅のつばくろ達者で居てね。<結末の分かっている恋雪解風><ブティックのShow windowのみ春の風><独り泣くいつの間にやら虫が鳴く>など。大人に成る前の作者のつぶやきが聞こえる句集。思春期の危うくも敏感な感受性もやがて大人になって錆びついて鈍くなってゆくのだろう。命短し恋せよ乙女、脱線した、面目ない。『雪降る予感』(1993)所収。(藤嶋 務)


November 13112014

 後ろ手に歩むは鴨の気持ちかな

                           こしのゆみこ

らりと晴れあがった気持ちのよい道を何も持たずに、手を後ろに回してぶらぶら歩いているのだろう。陸に上がった鴨は羽を後ろに揃え、水かきをつけたオレンジの足でよたよた歩く姿がユーモラスで可愛い。「気持ちかな」だから手を使わずに足だけを推進力に進むその動き、おしりが自然と左右にふれる動作に鴨の気持ちを味わっている。直喩や見立てだと対象に距離感があるが、自分の気持ちにぐっと引きつけて詠んだことで後ろ手に歩く人の姿とよたよた歩く鴨が自然に重なる。なんだか私も後ろ手で歩くたびに鴨の気持ちになって歩けそうな気がする。『コイツァンの猫』(2009)所収。(三宅やよい)




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