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November 18112014

 返り咲くたんぽぽに茎なかりけり

                           福神規子

り花とは本来咲くべき季節ではない時期に、陽気の具合で咲いてしまう花。小春日のあたたかな日だまりで、たんぽぽの黄色が鮮やかに目に飛び込むことがある。たんぽぽの生育環境はかなり過酷でも、たとえばアスファルトのわずかな隙間でも育つことが可能だ。とかく生命力の強い植物は嫌われる傾向にあるが、その姿かたちによって誰にも愛される花である。葉を地面にぴったりと放射状に広げることで、一枚一枚重ならないようにして日照面積を多く取るような工夫がなされ、茎の長短も実はエネルギー効率をしたたかに考えたものだ。しかし、たんぽぽは可憐な風情をくずすことなく、寒風のなかでわずかな日向にしがみついているようにも見え、ことさらいじらしく映る。思わず膝を寄せ「大丈夫?」と問いかけてしまうほどに。〈鍵穴は古墳のかたち梅雨深し〉〈ままごとにかあさんがゐて草の花〉〈さりながら人は旅人山法師〉『人は旅人』(2014)所収。(土肥あき子)




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