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February 2422015

 雪解風産着のにほひのせてくる

                           福谷俊子

が降らない場所に生まれ育ったこともあり、雪解風という実感は残念ながら分からないが、それは待ちこがれたものであり、厳しい季節の終わりを告げる嬉しい知らせであることだけは理解する。やや逸れるが、一番好きな匂いという質問のなかで、「雪が降る前の匂い」という答えを見つけた時、雪国生まれの友人が「わかるわかる」と頷いたのち、「絶対に説明できない」と言い放ったことなども思い出しつつ、雪への羨望は深まるばかりだ。掲句によって雪解の時期に吹く風は、清潔な産着の匂いがもっともふさわしいものだと知った。雪解風とは春の赤ん坊を包んでいるのだと気づくと、その匂いはしごくもっともで、健やかさと幸せにふたたびうっとりと思いを馳せるのである。〈さよなら△またきて□鳥雲に〉〈名を知らぬ星がいつぱい朱欒咲く〉『桐の花』(2014)所収。(土肥あき子)




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