@~T句

March 3132015

 日をひと日ひと日集めて猫柳

                           畠 梅乃

れほど行きつ戻りつした春の日差しもすっかり頼もしく、もう後戻りすることはないと信じられる力強さとなった。猫柳の花穂は絹のようになめらかさを持つ銀色の美しい毛で覆われる。その名は猫の尾に似ているところから付けられたというが、手ざわりは爪先あたりにそっくりで、猫を失った年など、何度も何度も撫でては思いを馳せていた。猫柳はまだ春の浅い頃に紅色の殻を割り、冷たい風にふるえるように身をさらし、春の日を丹念に拾いながらふっくらと育っていく。春の植物は美しいだけではなく、余寒の日々をけなげに乗り越えてきた姿を思いやることで、いっそう胸が熱くなる。掲句の「ひと日ひと日」にもその感動が表れている。〈竹皮を脱いできれいな背骨かな〉〈水平は傾きやすし赤とんぼ〉『血脈』(2015)所収。(土肥あき子)




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