cナ子句

April 0442015

 ニセモノのあつけらかんと春麗

                           岩田暁子

物とニセモノは違うのだな、とこの句を読んで思った。偽物、と書くとそこには、騙そうとする悪意が見えるが、ニセモノ、と書かれるとまさに、あっけらかん、という言葉がぴったりくるようななんちゃって感が生まれる。それは、本物と見紛うほどよくできているかどうかとは別で、思わず失笑してしまう偽キャラクター人形などは、騙すという意識さえない図々しい偽物だろう。この句のニセモノの正体はわからないが、作者はその明らかなニセモノぶりを楽しんでいる。「うららか、はそれだけで春なので、春うらら、と重ねるのはあまり感心しない」と言われることもあるのだが、この句の場合は、春麗、と重ねた文字が大らかにニセモノにも光をあてて、まさに春爛漫という印象だ。『花文字』(2014)所収。(今井肖子)




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