i句

April 1942015

 春星のめぐる夜空を時計とす

                           末永朱胤

時記の上では晩春となりましたが、掲句は、冬の名残のある初春の句でしょう。凍てついた夜空には、春の星座がくっきりと見えていて、しばらく佇んでいると、星座はゆっくりと動いているような気がします。贅沢な時計です。地球上で、一番大きな時計です。そして、デザインも美しい。空は深い色あいで、数多の星々が幾何的に結びついて、春の夜空をデザインしています。春星がめぐる天体の運行が時の経過を告げ、「時計とす」に、作者の意志が表れています。それは、高級腕時計をはめ て社会的な時間に生きることよりも、ときに、宇宙的な時間に身を委ねて、則天去私の境地に遊ばんとする意志です。俳誌「ににん」(2015年春号)所載。(小笠原高志)




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