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March 1032016

 キャベジンや春の夜に浮く観覧車

                           藤田 俊

ャベジンは胃腸にいいと言われるキャベツがそのまま商品名になっている冗談みたいな胃薬だ。漱石の時代より日本人は胃が弱い人が多いから「大田胃酸」や「キャベジン」を求める人も多かったのだろう。キャベジンを飲むと重苦しくもたれていた胃も軽くなってさわやかに軽くなるのだろう。春の夜に浮く観覧車のように。句の内容としては数ある胃薬のどれでもいいように思うが、固有名詞の響きと愛嬌が勝負どころ。春の夜の観覧車の楽しさはキャベジンじゃないとぴったりこない。固有名詞だと後の時代にわからなくなる、普遍性がないという人もいるが固有名詞の音や楽しさに俳句が印象付けられれば十分ではないか。固有名詞は時代の創作でもあり使わない手はない。調べることは後からだってできるのだから。『関西俳句なう』(2015)所収。(三宅やよい)




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