4月1日(土) 万愚節ともいふ父の忌なりけり
4月2日(日) うまや路や松のはろかに狂ひ凧 4月3日(月) 奇術にして仁術の俳パッとさくら 4月4日(火) どことなく傷みはじめし春の家 4月5日(水) 山門を出れば日本ぞ茶摘唄 4月6日(木) 畝はしづかに集まり隆まり入学す 4月7日(金) つくねんと木馬よ春の星ともり 4月8日(土) 地にぢかに居る故の酔ひ花莚
4月9日(日) 夜櫻のぼんぼりの字の粟おこし 4月10日(月) そんなことよく思ひつく春の水 4月11日(火) 山吹や根雪の上の飛騨の径 4月12日(水) 次の樹へ吹き移りゆく杉花粉 4月13日(木) 花びらの一つを恋ふる静電気 4月14日(金) 針のとぶレコード川のあざみかな 4月15日(土) 野遊びの皆伏し彼等兵たりき
4月16日(日) 耕人に傾き咲けり山ざくら 4月17日(月) 天が下に風船売となりにけり 4月18日(火) わが屋根をゆく恋猫は恋死ねや 4月19日(水) 木蓮や母の声音の若さ憂し 4月20日(木) 蝌蚪の辺に胎児をささぐごとくたつ 4月21日(金) 暗殺の寝間の明るさ蝶の昼 4月22日(土) 行く春やみんな知らない人ばかり
4月23日(日) 揚げ物の音が窓洩れ春夕焼 4月24日(月) うぐひすや寝起よき子と話しゐる 4月25日(火) 桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々 4月26日(水) 割り算でといてみなさい春の水 4月27日(木) うららかや袱紗畳まず膝にある 4月28日(金) 鴨のこる池が真中競馬場 4月29日(土) あすなろの明日を重ねし春落葉
4月30日(日) つばくらや嫁してよりせぬ腕時計
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