1月1日(月) 二十世紀なり列国に御慶申す也 1月2日(火) 御降りや今年いかにと義父の問ふ 1月3日(水) 羽子板の重きが嬉し突かで立つ 1月4日(木) 年酒酌むふるさと遠き二人かな 1月5日(金) 手毬の子妬心つよきはうつくしき 1月6日(土) 女手の如き税吏の賀状来ぬ
1月7日(日) 竹馬やいろはにほへとちりぢりに 1月8日(月) 読初の葩餅の由来かな 1月9日(火) 猟夫伏せ一羽より目を離さざる 1月10日(水) 冬眠すわれら千の眼球売り払い 1月11日(木) 目隠しの闇に母ゐる福笑ひ 1月12日(金) マスクして我と汝でありしかな 1月13日(土) 戸口より日暮が見えて雪の国
1月14日(日) 寒燈といへどラジオを点すのみ 1月15日(月) 雪降りつもる電話魔は寝ている 1月16日(火) わが過去に角帽ありてスキーなし 1月17日(水) 味噌汁におとすいやしさ寒卵 1月18日(木) 湯婆などむかしむかしを売る小店 1月19日(金) 罠ありと狸に読めぬ札吊りし 1月20日(土) 嚢中に角ばる字引旅はじめ
1月21日(日) おうおうといへど敲くや雪の門 1月22日(月) お辞儀してマフラー垂れて地上かな 1月23日(火) うつし身の寒極まりし笑ひ声 1月24日(水) 梅林やこの世にすこし声を出す 1月25日(木) 寒の水喉越す辛口と思ふ 1月26日(金) 猟銃も女も寝たる畳かな 1月27日(土) 独り碁や笹に粉雪のつもる日に
1月28日(日) 鯛焼の頭は君にわれは尾を 1月29日(月) 受験生呼びあひて坂下りゆく 1月30日(火) 冬帽子かむりて勝負つきにけり 1月31日(水) ガラス玉これ雪女の義眼です
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