3月1日(木) 松林だっただっただっただった 3月2日(金) 春の口紅三越の紙の色 3月3日(土) たらちねの抓までありや雛の鼻
3月4日(日) 特急の風が手伝う野焼きかな 3月5日(月) 暗室に酸ゆき朧のありて父 3月6日(火) きつぱりとせぬゆゑ春の雲といふ 3月7日(水) 男衆の声弾み雪囲い解く 3月8日(木) 青き踏む感電防止靴のまま 3月9日(金) 畦焼の祖父が火入れの責を負ふ 3月10日(土) 燃やすべき今日の心や椿燃ゆ
3月11日(日) 雲雀より空にやすらふ峠哉 3月12日(月) 春宵や夫に二人の女客 3月13日(火) あたたかな女坐りの人魚の絵 3月14日(水) 炬燵今日なき珈琲の熱さかな 3月15日(木) ふらここを乗り捨て今日の暮らしかな 3月16日(金) 朝靄に梅は牛乳より濃かりけり 3月17日(土) サフランの二つ咲けども起きて来ず
3月18日(日) 鶯のけはひ興りて鳴きにけり 3月19日(月) 悲しみの牛車のごとく来たる春 3月20日(火) 白椿亡き子の臍の緒五十年 3月21日(水) 春寒やしり尾かれたる干鰈 3月22日(木) 面壁(めんぺき)も二十二年の彼岸かな 3月23日(金) 雪すべてやみて宙より一二片 3月24日(土) 山彦の山を降り来よ蓬餅
3月25日(日) 雀来て障子にうごく花の影 3月26日(月) あの世めく満開の絵の種袋 3月27日(火) 街に出てなほ卒業の群解かず 3月28日(水) 影ふかくすみれ色なるおへそかな 3月29日(木) 陽炎の広場に白い召使 3月30日(金) 三月やモナリザを売る石畳 3月31日(土) 初蝶と見ればふたつとなりにけり
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