食器



母親は十年以上前に亡くなり、 一人暮らしで頑張っていた父親も、 足腰が立たなくなって施設に行った。 それ以来その家は空っぽだったそうだけど、 施設で必要なものがあったので、 息子さんが久しぶりに帰ったんだって。 そうしたら、 棚から食器が落ちて割れていたんだってさ。 一瞬、泥棒か? と思ったけど、 そこまで部屋は荒れていない。 そこで思い出したんだって。 前に来てからそれまでの間に、 三・一一があったってことを。 そして昔はその家にも 生活ってものがあったなあってことも、 ついでにね。

2012年7月



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