ガラス板



眠くなったので寝たのだけれども、 寝たあともいつまでも眠たくて、 なかなか起きられないのだった。 わたしは、 ああ眠い、ああ眠いと思いながら、 歩いていったが、 わたしは寝ているのだから、 歩いていったのは夢のなかだった。 気がつくと、 ほかの人たちは、 みんな服を着ているのに、 わたしだけがまったくのまる裸なのだ。 醜い裸を見られるのが恥ずかしくて、 わたしは、 ちんちんをばたばたさせながら、 走って逃げたが、 逃げた先にもほかの人たちがいて、 わたしはどうしても一人になれないのだった。 どうしてこんなときぐらい、 一人にしておいてくれないのだろう、 と世のなかを恨めしく思ったが、 世のなかが恨めしいのはいつものことなので、 わたしはまる裸でがまんすることにして、 逃げるのをやめた。 するとわたしに話しかけてくる人がいた。 その人は、 わたしがまる裸だということを、 少しも気にしていないようだった。 ああ、この人はまる裸のわたしを差別していないんだ、 と思うとうれしくなって、 わたしはむちゅうになって話していた。 夢のなかなので、 話し相手は少しずつ変形していったが、 そんなことはおかまいなしに、 話していた。 そのうちに、 わたしは眠いのに、 どうしてこんなに忙しいのだろう、 ということに気づいた。 よく見ると、 わたしが話していた相手は、 大きなガラス板に描かれているだけだった。 ガラス板には背景の図柄も描かれていた。 よく描けているものだと感心しながら、 わたしはガラス板のまえで、 ちんちんをぶらぶらさせていた。 そうかみんなガラス板だったのかと思ったら、 ほっとして、 目が覚めた。 ほとんどまた寝てしまいそうだったが、 気力をふりしぼって起きることにした。


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
|ホームページ||詩|
|目次||前頁(今がお得)||次頁(視野)|
PDFPDF版 PDFPDF用紙節約版