記憶に残る幻想
私は地獄の印刷所で、知識が世代から世代に渡されていくしくみを見てきた。
第一の部屋には龍人がいて、洞穴の口からごみを掃き出していた。洞穴のなかでは龍の群れが穴を掘っていた。
第二の部屋には蝮がいて、岩と洞穴をぐるぐる巻きにしていた。そしてほかの者は蝮を金、銀、宝石で飾り立てていた。
第三の部屋には空の翼と羽毛を持つ鷲がいて、その翼で洞穴のなかを無限に変えていた。周囲には鷲のような人間がいて、果てしなく切り立った絶壁に宮殿を築いていた。
第四の部屋には、炎に包まれ、怒りくるった獅子がいて、金属を溶かし、生きた液体に変えていた。
第五の部屋には、名前を持たない生物がいて、金属液を広大な空間に撒き散らしていた。
それらは第六の部屋の主である人間によって受け取られ、本の形を取り、書庫に並べられた。
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