チラ・ホラ
チラ・ホラ、
大粒の太陽と黄金色(きんいろ)のタマゴが
シャックリ・ハウス・レストランの陳列ケースの上に浮かんでいます。
──お客さま方は、まさか不可思議なことを考えてはいないでしょうね。
(この小さな物語は 亡き瀬沼孝彰さんに捧げたいとおもいます)
私の本名は ネコヒイキですが、
シャックリ・ハウス・レストランのオーナーでもあります。
──こちらで、お召し上がりですか?
チラ・ホラ
チラ・ホラ、
(こんな時には、このメニュー)
【勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。】
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勇気を一度も知らなくてわたしは悲しい。
恐怖が去ろうとしないので、わたしは悲しい。
太陽に近く、熱からは遠く、
わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。
ピクニックは賑やかすぎて、足を踏みだせない。
テーブルは強すぎて、わたしは縁(へり)に蹙(しが)みついているだけだ。
誰でもいい、わたしは人の肩によりかかる。誰だってわたしよりは暖かい。
勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。
わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。 (四方田犬彦 訳)
(ジェイン・ボウルズが29歳のときに書いた「ある老女の歌」より) |
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シャリ
シャリ
シャリ、
──どうなさいました?
(ヘルシー・サラダが S・O・S)
おしゃべりをしない大粒の太陽は、
「甘さが、ひかえめ」になっておりますが──
──キュッと、握ると、ポップ・コーンのように弾ける、
黄金色(きんいろ)のタマゴたちは、
白い夏服の、お嬢様方がお好みなのです。
(こんな時には、このメニュー)
チラ・ホラ
チラ・ホラ、
──「夏は来ぬ」
天上の、白い雲が騒がしくて、
わたしはあやしいふたりぐみのことばかり考えていました。
──かなしみが始まれば、リュック・サックの紐が解けなくなるし、
あたためたタマゴが凍えてしまうわ、
銀白色(ぎんいろ)のタマゴたちは、シャリ・シャリとした歌がお好きなのです。
【もっとみだらになればよかった】 (瀬沼孝彰の出典不明の詩編のタイトルより)
シャリ
シャリ
シャリ、
──「AKIは来ぬ」
その時、
わたくし、ネコヒイキは
ラスト・オーダーのことばかり考えておりまして、
「きれいな雨のスケジュール表」のことはすっかり、忘れておりました。
(こんな時には、このメニュー)
──冬のデザートはタンク・タンクのMILKです。
青木栄瞳詩編「雪印」
シャリ
シャリ
シャリ、
《初冠雪のニュースです》
チャンスです、
勇気です。
北の 山岳の
雪帽子は
白。
日本の お嫁さんの
綿帽子も
白。
チャンスです、
勇気です、
まだわかりません。
──うまれたての はじめての
白い気配を かんじています。
──御覧になられましたか?
僕も
白い手紙を、
日曜日に いただきました。
1997 6 19
(第一回のセッションを終了します。)
今回のBIG/ゲストお二人の、<強靭なかなしみ>に、わたくしは、まだまだ太
刀打ちできません。お二人に《初冠雪の、気持ち》を返礼させていただきます。
次回(作品002番)よりの対象作品につきましては オリジナル作品であれば、
ジャンルは問いません。アート(イラスト、オブジェ、写真、ビデオアート、P0Pアー
ト、ポエム )・サウンド・インテリア・ファッション・その他(ケーキ・クッキー
etc)──参考資料・第6回デザイン・フェスタ開催要項より引用 かしこ |