セッション・ポエム(作品001番)=ゲスト詩編/ジェイン・ボウルズ、瀬沼孝彰
 シャックリ・ハウスのレストラン


   チラ・ホラ    チラ・ホラ、  大粒の太陽と黄金色(きんいろ)のタマゴが  シャックリ・ハウス・レストランの陳列ケースの上に浮かんでいます。  ──お客さま方は、まさか不可思議なことを考えてはいないでしょうね。   (この小さな物語は 亡き瀬沼孝彰さんに捧げたいとおもいます)  私の本名は ネコヒイキですが、  シャックリ・ハウス・レストランのオーナーでもあります。  ──こちらで、お召し上がりですか?    チラ・ホラ    チラ・ホラ、 (こんな時には、このメニュー) 【勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。】
   
勇気を一度も知らなくてわたしは悲しい。
恐怖が去ろうとしないので、わたしは悲しい。
太陽に近く、熱からは遠く、
わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。
ピクニックは賑やかすぎて、足を踏みだせない。
テーブルは強すぎて、わたしは縁(へり)に蹙(しが)みついているだけだ。
誰でもいい、わたしは人の肩によりかかる。誰だってわたしよりは暖かい。
勇気を一度も知らなくて、わたしは悲しい。
わたしの終末はもうそこまで来ていると思う。      (四方田犬彦 訳)

(ジェイン・ボウルズが29歳のときに書いた「ある老女の歌」より)

   シャリ    シャリ    シャリ、    ──どうなさいました? (ヘルシー・サラダが S・O・S)   おしゃべりをしない大粒の太陽は、  「甘さが、ひかえめ」になっておりますが──  ──キュッと、握ると、ポップ・コーンのように弾ける、  黄金色(きんいろ)のタマゴたちは、  白い夏服の、お嬢様方がお好みなのです。 (こんな時には、このメニュー)    チラ・ホラ    チラ・ホラ、    ──「夏は来ぬ」  天上の、白い雲が騒がしくて、  わたしはあやしいふたりぐみのことばかり考えていました。  ──かなしみが始まれば、リュック・サックの紐が解けなくなるし、  あたためたタマゴが凍えてしまうわ、  銀白色(ぎんいろ)のタマゴたちは、シャリ・シャリとした歌がお好きなのです。 【もっとみだらになればよかった】  (瀬沼孝彰の出典不明の詩編のタイトルより)        シャリ    シャリ    シャリ、    ──「AKIは来ぬ」  その時、  わたくし、ネコヒイキは   ラスト・オーダーのことばかり考えておりまして、 「きれいな雨のスケジュール表」のことはすっかり、忘れておりました。 (こんな時には、このメニュー)     ──冬のデザートはタンク・タンクのMILKです。 青木栄瞳詩編「雪印」    シャリ    シャリ    シャリ、   《初冠雪のニュースです》    チャンスです、    勇気です。      北の 山岳の      雪帽子は      白。      日本の お嫁さんの      綿帽子も      白。    チャンスです、    勇気です、    まだわかりません。    ──うまれたての はじめての      白い気配を かんじています。    ──御覧になられましたか?    僕も    白い手紙を、    日曜日に いただきました。                              1997 6 19 (第一回のセッションを終了します。)   今回のBIG/ゲストお二人の、<強靭なかなしみ>に、わたくしは、まだまだ太  刀打ちできません。お二人に《初冠雪の、気持ち》を返礼させていただきます。    次回(作品002番)よりの対象作品につきましては オリジナル作品であれば、  ジャンルは問いません。アート(イラスト、オブジェ、写真、ビデオアート、P0Pアー  ト、ポエム )・サウンド・インテリア・ファッション・その他(ケーキ・クッキー    etc)──参考資料・第6回デザイン・フェスタ開催要項より引用    かしこ 


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