美しい本だ 表紙に浮かび出た銀文字 扉をあければ 頁のあちこちにばらまかれた活字が 輝いて見えた だが僕は その本に書かれた呪文が 読みとけなかったのだ くやしまぎれに その本を食べ 見事に吐き出してしまった そこで僕は旅に出た 戸外の空気はすがすがしく 今まで暴れまわっていた脳細胞たちは 鎮められて 静かに横になった だがこの風景は 現実のものなのだろうか 僕の現実である には違いないだろうが 僕一人だけの現実 なのではないだろうか その時 沛然たる雨が降ってきた