インソムニア



布団のなかに入れば、 身体の底から、 噴き出すような 突き上げてくるようなものが、 喉を満たして、 いつまでも眠れないことが、 わかっているので、 寝室に向かう前に、 医者に頼み込んで、 分けてもらったクスリを、 ごくりとのみこみ、 そのくせ、 よせばいいのに、 寝室の手前で、 ふらっと横に曲がって、 本を手に取っている。 クスリをのんだからといって、 すぐに眠くなるものではなく、 本だって、 何ページも読めるのだが、 そのうちに、 さすがに意識が混濁していることに、 ふと気付く。 こいつの度合いが激しくなると、 起きられなくなるのか、 などと思いながら、 布団にもぐりこむが、 やはり、 そのときはなかなか来ない。


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
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