翻訳論



知り合いの翻訳家、 自分の考えを書くのは嫌い、 だって、 考えを用意するのが面倒じゃないか、 言葉になるのを待っている、 考えがある、 その考えに言葉を与えるのが好き、 それは乗り移る、 ということだけど、 原著の著者に、 なろうとするわけじゃない、 自分のものとして、 違和感のない言葉を吐くこと、 以前は口ごもるようなところが残ったが、 仕事を始めて十五年、 ようやくしっくりとくることが、 多くなってきた、 うまくいったと思うのは、 原語に戻すのが難しそうな、 文章になったとき、 でも…… そんな人間を誰が必要とするのだろうか?


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
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