訪問
有名なロンドンの二階建てバスに初めて乗ったのは
イギリスで過ごした最後の夕方だった
仕事帰りで満員のバスは北に向かって走る
最初は増える一方だった客が
逆に減る一方になると
周囲の建物の高さも下がってくる
そんな街並みのなかに日本語の看板などもあって
(漢字だけではなくてカナも入っている)
あれがIRAに爆破された日本料理店
と下山君が指さした店のなかは
がらんどうだった
終点は地下鉄のGolders Green駅
郊外に来ると地下鉄も高架になっていて
遠くからもよく見える
この辺はユダヤ人と日本人が多いから
JJ街なんて言われているのさ
下山君はそう言いながら
駅から自宅までの道を案内してくれた
歩きの距離は思ったより短く
下山君はこことレンガ作りのsemi-detachedを指さした
煙突が立っていて
まるでイギリス人が住んでいるような家だ
奥さんが出てきてご挨拶
大谷君や私は初めてではないが
奥さん同士は初対面
さっそくイギリス人が住んでいるような家の前で記念撮影とあいなった
私たちは休みを取っての旅行だが
今日は水曜日
下山君はスーツ姿で私たちを案内してくれたのである
さぞかし迷惑だっただろうと思うのだが
下山夫妻のhostshipはすばらしいもので
ほどよいタイミングでおいしい料理においしい酒
話はおもしろくて観光やショッピングの情報も満載
(奥さんが厨房から出てきたときには下山君が料理を取り分けたりして)
退屈させず気を使わせず
最後はおいしい紅茶に手作りスコーン
さすがにイギリス仕込みは違うと感心した
なのに東洋の野蛮人が
学生時代のあることないこと一人でぶちまけて
ガハハハハなどと下品に笑っているうちに
夜は更けていってしまった
ごめんなさい
反省してます
(C) Copyright, 1996 NAGAO, Takahiro
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