ホテルのロビーで窓から外を見ていた 下山君の運転するワゴン車が通りを走ってきて ホテルのエントランスに向かって曲がってくるのが見えた 運転している下山君の顔もはっきり見えた 中から手を振ったが下山君は気付かないようだった ホテルの前には適当な駐車スペースがなかったので ワゴン車はホテルの前を少し通り過ぎたところで止まった 下山君が住んでいるからロンドンに来たのに 日本から遠く離れたこの街に下山君がいるというのが 何とも不思議だった ワゴン車から下山君が下りてくるのと同時に ホテルから飛び出して走っていった 下山君もすぐに私に気付いたようだった 日本じゃないからこんなことをしても自然な気がするよ と言って西洋人のように抱き合った そうは言ったものの 西洋人よりはぎごちない感じがした それでも 抱き合っている相手は紛れもなく下山君だと実感することができた